適性検査SPI3お役立ちコラム

採用充足を左右するのは
「量」より「質」と「個別対応」
〜新卒採用調査データから読み解く、
人事が今すぐ動くべき3つのポイント〜

2026年07月27日
  • 人事調査・研究

「採用人数が足りない」「業務負担が重すぎる」----多くの人事担当者が共通して抱えるこの悩みに、データが一つの答えを示した。採用充足は企業規模だけでは決まらず施策の数でもなく、選考プロセスの「質」と応募者・内定者への「個別対応」の深さだ。リクルートマネジメントソリューションズが2026年1月に実施した調査(有効回答967社)の結果を基に、新卒・中途を兼務する人事担当者が明日から取り組める具体的なアクションを整理する。

INDEX



1 調査から見えてきた採用充足の真相

「企業規模」では説明できない充足格差

一般的に「大手企業ほど採用しやすい」というイメージがあるが、今回の調査では同規模の企業間でも充足状況に大きなばらつきが確認された。500名未満の企業では未充足が約4割台後半、500名以上では3割台と規模の影響は一定程度あるものの、同一規模の中でも充足・未充足に分かれている。

「うちの会社は中小だから採りにくい」「知名度がないから仕方ない」といってすぐに諦める必要はない。同じ条件下でも採用を成功させている企業が存在し、その差のひとつとして「やり方」がある。

 

調査データ 示す内容
35.4% 過去3年間で選考プロセスを見直した企業の割合。見直し実施企業の約7割が効果を実感している
4.1step 新卒採用の平均選考ステップ数。企業規模が大きいほど増加する傾向がある
18.9% 構造化面接を導入している企業の割合。約4分の3は未導入のままだ
17.6% AI面接の導入率。検討中(24.7%)を合わせると約4割が関心を示している



充足企業が共通して行っている「振り返り」の深さ

充足している企業と未充足企業の間で明確な差が見られた行動がある。それが選考プロセスの「要素別振り返り」だ。

未充足企業も「内定承諾数」や「採用予定数への達成状況」といった結果指標は確認している。しかし充足企業はそこで止まらない。「面接者ごとの通過率の差」「面接者・リクルーターへのアンケート」など、プロセスを構成する個々の要素まで深く掘り下げている。

結果だけを見ていれば課題は「採用人数が足りない」という漠然としたものになる。しかしプロセスを分解すると「この段階での歩留まりが悪い」「特定の面接者だけ通過率が低い」という具体的な改善ポイントが見えてくる。新卒・中途双方を担当する人事にとって、この「どこで何が起きているか」を把握する習慣は特に重要だ。

【現場へのアクション】採用終了後に「内定承諾率」だけを確認して終わりにしていないか?今期から「ステップごとの通過率」「面接別の評価傾向」まで振り返りシートに追加しよう。

 

2 アトラクト施策は「数」より「質」----候補者体験の設計がカギ

実施の有無より「内容」が充足を左右する

インターンシップの実施、リクルーターによる情報提供、座談会の開催----これらはすでに多くの企業が取り組んでいるアトラクト施策だ。しかし調査では、充足企業と未充足企業の間で「施策を実施しているかどうか」よりも「施策の内容が充実しているかどうか」に差が出ることが分かった。

具体的に差がついたのは以下のような点だ。

  • 応募者の自己理解を促すコンテンツや機会の提供
  • 志向やキャリアに合わせた面談社員のアサイン
  • 選考面接における面接者への教育の実施

注目すべきは「面接者への教育」だ。多くの企業が面接を「評価の場」として設計するが、候補者から見れば「その企業を見極める場」でもある。面接者が候補者と真摯に向き合えていたか、候補者の話をよく聞いて適切にリアクションできたか等が、その後の志望度を大きく左右する。

よくある誤解:「イベントを増やせば志望度が上がる」

採用に苦戦すると、多くの人事担当者はまず「施策数を増やす」方向に動く。インターンシップを追加し、説明会を増やし、SNS発信を強化する。しかし今回の調査が示すのは、施策の量より質が重要だということだ。

参加者が自分のキャリアと企業の仕事のつながりを「自分事」として理解できるか。面談を担当する社員が候補者の関心に合わせた話ができるか。これらの質的な部分が採用充足に影響している。

新卒採用と中途採用を兼務する担当者は特に注意が必要だ。中途採用では「スキルと求人のマッチング」が中心になりがちだが、新卒採用では「自己理解の促進」が候補者の動機形成に直結する。兼務しているからこそ、採用種別ごとに必要なアトラクトの「質」が異なることを意識したい。

【現場へのアクション】インターンシップや説明会の内容を「候補者が自分のキャリアと紐づけられるか」の視点で見直す。また、面接向けに「候補者の話を踏まえて自社の魅力をどう伝えるか」のブリーフィングを実施しよう。

 

3 内定者フォローは「個別面談」が辞退防止の決め手

一律対応では届かない----「個別」がカギ

内定者フォローとして多くの企業が実施しているのは、内定者懇親会、メール・電話による定期連絡、人事による個別面談などだ。しかし充足企業と未充足企業を比較すると、差が生まれているのは「個別面談」の実施有無だった。

1,000人以上の大企業では「人事による個別面談」、1,000人未満の企業では「リクルーターによる個別面談」の実施率に充足・未充足の差が確認された。一方で懇親会や一斉メールなどの一律対応施策では、充足状況との関係性は限定的だった。

なぜ個別面談が有効なのか。それは内定辞退の理由が本質的に「個人の不安や疑問」から来るからだ。他社との比較、入社後の業務への不安、配属部署や上司との相性----これらは懇親会のグループトークでは解消されない。一人ひとりに向き合う場があってこそ、内定者の不安が軽減され、入社意欲が高まる。

中途採用との兼務担当者が陥りやすい罠

中途採用の経験が豊富な人事担当者ほど、新卒の内定者フォローを「連絡を絶やさなければよい」と捉えがちだ。中途の場合、内定者は社会人経験があり、入社後のイメージを自力で持てることが多い。しかし新卒内定者の多くは初めての就職活動であり、入社後のリアルが見えにくい。

この違いを理解したうえで、新卒内定者に対しては「情報提供」ではなく「対話」を中心に据えたフォロー設計が重要だ。定期的な個別面談の場を設け、内定者一人ひとりの関心事や不安を丁寧に拾い上げる体制を整えることが、内定辞退防止に直結する。

【現場へのアクション】内定者フォローのスケジュールを見直し、「個別面談」を必須項目として組み込む。リクルーター制度がある場合は、内定者ごとに担当者をアサインし、定期的な面談を設定しよう。

 

4 構造化面接とAI面接----「新手法」の正しい活用方針

構造化面接:評価精度を上げるための現実的なアプローチ

構造化面接とは、面接者が行う質問と評価観点を共通化し、応募者の行動について問う手法だ。評価精度向上のエビデンスが蓄積されているにもかかわらず、今回の調査では「完全に導入している」企業は18.9%にとどまり、類似手法を含めても26.4%と約4分の1に過ぎない。

未導入の理由として最多だったのは「評価基準・レベル感を揃えるのが難しい(49.1%)」であり、次いで「面接者にインプットするのが難しい(37.5%)」「評価観点を明確にするのが難しい(35.2%)」が続く。さらに「面接者がやりにくいと感じる(32.1%)」という現場の抵抗感も約3割に上る。

この状況が示す本質的な課題は、構造化面接の「概念」が広まっていても「運用」が定着していないことだ。面接者への一度のトレーニングで終わりにするのではなく、継続的なフィードバックと改善サイクルを組み込まなければ形骸化する。

スモールスタート:まず特定の面接ステップ(例:一次面接)だけに構造化面接を導入し、効果を測定してから段階的に拡大する

面接トレーニング:評価観点の共通化だけでなく、「なぜこの質問をするのか」という背景理解まで含めた研修を設計する

フィードバックループ:面接後に評価者間で短時間のすり合わせを行い、評価のブレを可視化する習慣をつける

 

AI面接:導入前に整理すべき「評価への位置づけ」

AI面接の導入率は17.6%で、検討中(24.7%)を合わせると約4割の企業が関心を示している。導入の主な理由は「採用担当の業務効率化」「面接者の負荷軽減」だが、最終的な決め手として最も多く挙げられたのは「公平な基準での選抜」だった。

ただし現時点では、選考プロセスにAI面接を本格的に組み込んでいる企業はわずか2.7%にとどまる。多くは補助的な活用に留まっており、評価への位置づけや選考結果への影響度については、各企業がまだ試行錯誤の段階にある。

AI面接を導入する際に人事担当者が最初に明確にすべきは「何を目的とするか」だ。スクリーニングの効率化なのか、評価の公平性向上なのか、あるいは候補者体験の改善なのか。目的が曖昧なままツールを導入しても、現場の混乱と候補者の離脱を招くリスクがある。

 

まとめ ----明日から始める採用充足への3ステップ

本コラムで紹介した調査結果のポイントを整理する。採用充足を実現している企業に共通するのは、以下の3つの特徴だ。

STEP アクション ポイント
1 プロセス振り返りの深化 結果指標だけでなく、ステップ別・面接者別の通過率や評価傾向まで振り返る習慣をつける
2 アトラクト施策の「質」向上 施策数より内容の深さ。候補者が「自分事」として企業の仕事を理解できる機会を設計し、面接者のアトラクト力を高める
3 内定者への個別面談の制度化 懇親会や一斉メールより、担当者との1on1面談を必須化。内定辞退防止に最も効果的な「個別対応」を仕組み化する

 

採用難の時代において、「企業が学生を選ぶ」という一方的な視点はすでに過去のものとなった。企業と候補者が互いに選び、選ばれる関係の中で、人事担当者の役割はかつてないほど重要になっている。新卒・中途双方を担当するからこそ持てる視野の広さを活かし、選考プロセス全体を「評価の場」かつ「関係構築の場」として再設計することが、採用充足への最短経路だ。


0Z3A4770 2.jpgのサムネイル画像  松本洋平(まつもと ようへい)
   株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
   測定技術研究所 主任研究員
  
人材派遣会社を経て2007年入社。適性検査、組織サーベイ、多面調査等の開発・コンサルティングに従事。採用・昇進昇格・メンタルヘルス・配置配属など多様なテーマに関わる。リクルートにてシニア向けのアセスメント事業を担当した後、2023年より現職。採用面接や若手・中堅の離職などの人材の調達・定着に関わる
           領域や、人事にまつわる環境変化の歴史についての研究を行っている。